発生学0 初期発生

#09/12各論だけにするつもりだったが、解剖対策に復習として一応総論も軽くまとめた。ざっくりだけど。
#用語についてはラングマンとムーアでもかなりの隔たりがあった。だから用語はそんなもんって認識で。図中の用語についてもとった教科書などによって違っていることがあるため、だいたいニュアンスが同じものは同じものをさしていると考えてたほうがいい。
 
 
受精
 
1,精子が卵管内を移動中に先体を覆う被膜を除去され受精能獲得→放線冠を通過できるようになる
2,透明体のZP3(リガンド)に精子が結合すると精子からアクロマイシンが放出され透明帯を通過できるようになる(先体反応
3,精子卵子と融合する
4,卵子の表面顆粒からリソソームが放出され、これによって透明帯が変性させて(透明帯反応)、他の精子を通過させなくする。
 
受精がおきると卵子減数分裂が再開し、第2減数分裂が完了して染色体が女性前核を形成する。一方で精子の核は男性前核を形成する。
各前核はDNA量を倍増させたあと、接合して2媒体となり、有糸分裂を開始する。
 
2細胞期→4細胞期→8細胞期→(コンパクション(割球間の結合が強化され密集する))→桑実胚(16細胞期)
 
 
二層性胚盤(第2週)
内部細胞塊/胚結節と外細胞塊/栄養膜ができる。この状態を胞胚、とくに内部に空洞があるため胚盤胞という。

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栄養膜は栄養膜細胞層(内側)と栄養膜合胞体層(外側)にわかれる。(細胞層で分裂した細胞が合胞体層に遊走して融合する。合胞体=融合した細胞)
胚結節の細胞はちょっと複雑に分化して、細胞塊の中に羊膜腔が生じ、その床の部分にあたる細胞が変化して胚盤葉上層(羊膜腔側)と胚盤葉下層胚盤胞腔/原始卵黄嚢腔側)となり、二層性胚盤を形成する。
・このあたりで受精卵(この名前でいいのかな?)は母胎の子宮内膜に進入して、その中にあるような状態になる。
・・子宮粘膜上皮への侵入の際には、栄養膜がインテグリンという受容体を発現し、そこに上皮の細胞外基質であるラミニンやフィブロネクチンが作用するというように、栄養膜と上皮が協調して機能する。
 

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胚外体腔膜(黄色)が増殖し、胚外中胚葉を形成する。この胚外中胚葉中に胚外体腔が生じ、胚外体腔と卵黄嚢に囲まれる内側部分を胚外臓側中胚葉、胚外体腔と栄養膜細胞層・羊膜に囲まれる外側部分を胚外壁側中胚葉という。

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ここから胚外体腔が大きくなりつつ癒合して胚盤胞腔/原始卵黄嚢腔は圧迫され下側につぶれ、1つの大きな胚外体腔となる(≒絨毛膜腔)。さらに肺外臓側中胚葉の表面に胚盤葉下層から遊走してきた細胞がつき、卵黄嚢(二次卵黄嚢)が形成される。
またこの間に栄養膜では細胞柱としての絨毛(一次絨毛)が現れ始める。
・・胎児循環が形成され始めるのもこの時期。

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三層性胚盤(第3週)
原始線条が出現し、胚盤葉上層の細胞がここから下層に陥入を始める。原始線条が尾方に伸びていく際に、頭方では原始窩原始結節が形成される。この3胚葉が分化する過程を原腸形成という。
この際に、
・胚盤葉下層より下に入ったものは内胚葉 
・胚盤葉上層と下層の間にある細胞は中胚葉
・胚盤葉上層に残存する細胞は外胚葉 を形成する。
・・原腸形成後、全ての脊椎動物は類似した発生段階を経る。この時期を脊椎動物(界門綱目科属種・・・)に特徴的なボディプランを示すという意味からファイロティピック段階という。

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この後 原始線条からの陥入はなくなり、原始線条は縮小する。しかし原始窩からは陥入が続き、脊索の形成が行われる。これは原始窩から陥入した細胞が頭方の脊索前板へと移動し、脊索管が形成される。その後 脊索管の床がその下にある胚性中胚葉と癒合したあとでとろけて失われ、脊索管は卵黄嚢と交通するようになるとともに板状の脊索板となる。しかし脊索板の頭端の細胞から増殖がはじまって脊索板は隆起し、脊索が形成される。
・・この部分のラングマンは非常にわかりにくい。ムーアのほうがいい。
・この原腸形成期に体軸が確立される。

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脊索が形成されているころ絨毛も成長し、栄養膜細胞を芯にして表面を合胞体で覆われていただけの一次絨毛から、中胚葉細胞がその内側に進入した二次絨毛、さらに血管などが生じてきた三次絨毛へと成長する。
また栄養膜細胞層は増殖して外側にあったはずの合胞体層中に進入し(絨毛でも確かに進入してる)、ついに母胎側まで達して外側に外栄養膜細胞層殻を形成し、栄養膜全体を母胎側の子宮内膜に接着させる役割を果たすようになる。
胎盤の栄養膜合胞体層では、プロゲステロンヒト絨毛性ゴナドトロピン/hCG、ソマトマンモトロピンなどのホルモンが産生される。プロゲステロンは子宮や乳腺の発達を促進し、hCGは黄体の維持を、ソマトマンモトロピンは母胎の血糖を胎児に優先的に利用させる効果がある。

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・・体軸は原腸形成期に決定される。頭尾→背腹→左右と決定されるようだが、背腹って二層性胚盤の時から決まってるんじゃないの?
 
 
 
原腸形成の分子的制御
原腸形成以前
・胚盤の頭方縁の胚盤葉下層細胞が形成する領域である前方内臓性内胚葉/AVEにおいて転写因子の遺伝子OTX2、LIM1、HESX1などや分泌因子セルベルスの遺伝子といった頭部形成遺伝子が発現する。
・これによって頭尾軸が確立される。
・・・以下、斜体は遺伝子、斜体でないものはmRNAやタンパク質など遺伝子産物と区別する。
 
原腸形成の開始 
・原始結節にてトランスフォーミング増殖因子/TGF-βファミリーのノーダルNodalが発現し、原始線条の形成と維持に働く。
 
原腸形成開始後
骨形成タンパク4/BMP4が胚盤全体で分泌され、線維芽細胞増殖因子/FGFと共同して中胚葉の腹側化を行い、中間中胚葉(→腎)や側板中胚葉(→血液、体壁)の形成に関与する。
・・BMP4の働きは原始結節で発現する遺伝子(コルジン、ノギン、フォリスタチンなどを生じる)によって阻害され、腹側化するところとしないところができる。コルジンは転写因子グースコイドによって活性化される。
HNF3βは原始結節の維持と前脳や中脳の形成を誘導に関係する。
短尾遺伝子/T遺伝子は背側中胚葉の形成を調節する。
・・このようにして背腹軸が確立される。

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左右軸の確立
・線毛はふつう9×2+2構造だが、発生初期時には9×2+0構造の孤立線毛が現れ、時計回りに回転をはじめる。
・この回転により生まれた左向きの結節流が左側の感覚受容器で感知され、左側だけに特別なシグナル伝達機構が働く。
・原始線条から胚子の左側にだけ線維芽細胞増殖因子8/FGF8が分泌され、ノーダルの発現を誘導する。また神経板が形成されたあとではFGF8はノーダルとともにレフティ2を発現させる。
レフティ2は左側性の確立させる転写因子PITX2の発現を誘発する。
・・同時にレフティ1も左側で発現するが、これは左側を特徴付けるシグナルが右側に移動するのを抑制する。
NKX3.2は右側でだけ発現しており、右側性の確立に関係があるとされる。
・・・・孤立線毛は腎発生にも関係し、ADPKD遺伝子などに異常をきたすと嚢胞腎となる。

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胚子期(3週〜8週)
脊索が外胚葉を誘導する結果、外胚葉が隆起して神経ヒダが形成されさらに陥入して神経管となる。これはそののち頭方部は脳胞に、尾方部は脊髄に分化する。この際陥入した神経ヒダ(→神経管)よりもちょっと外側にあった外胚葉は神経堤となり、これは活発な遊走により中胚葉に入り、間葉組織となって神経節などの形成をおこなうようになる。

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・・なお神経管は第31体節レベルで尾側神経孔が閉鎖することにより終了してしまうため、そこからさらに尾方の仙部、尾部の神経管は尾芽から形成される。これを2次神経管形成

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中胚葉は4つに分けられる。中央部の神経管のまわりの中胚葉は沿軸中杯葉となり、これは体節を形成する。その外側の中間中胚葉は後に腎節や造腎細胞索など泌尿器系の細胞に分化する。また上側の羊膜腔を囲む中胚葉は壁側中胚葉となり、下側の卵黄嚢を囲む中胚葉は臓側中胚葉となる。この2つの中胚葉は、ここから羊膜腔が卵黄嚢を覆うように下側にダイナミックに移動することによって、胚内体腔(→体腔)の壁側・臓側をそれぞれ形成するようになる。また心臓や生殖巣などを形成する間葉にも関係する
・・ここの動きはよく理解しておくことが大切。
・・最後の図の一番外側は中胚葉になっているが、ここは羊膜腔を隔てた外側になったことに注意。その後胎児になるのはその内側の外胚葉で囲まれた部分から。これで内・中・外胚葉で囲まれた納得のいく構造になった。

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沿軸中杯葉は体節を形成するが、これは椎板・筋板・皮板にわかれ、それぞれ脊椎・筋肉・皮膚などの形成に関係する。

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先の包み込むようなダイナミックな動きは側方だけでなく頭尾方向でも起き、側方の包み込みで生じた腸管が頭尾方向の包み込みによって曲げられる(?)かんじで前腸・中腸・後腸が形成される。
前腸は形成時は口咽頭膜によって羊膜腔と隔てられているが、後に破れ羊膜腔と交通する。また後腸は排泄腔から排泄腔膜で隔てられているが、後に破れ肛門が開口する。中腸は卵黄嚢と交通しているが、次第に細くなり卵黄腸管となり、最終的には閉塞する。
また、卵黄嚢からでた憩室である尿膜は、部分的に胚子に取り込まれて排泄腔の形成に寄与している。
 

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神経誘導の分子的制御
・BMP4がコルジン、ノギン、フォリスタチンによって阻害されると、外胚葉から頭方での神経板の誘導が起き、前脳や中脳の組織を誘導する(阻害されないと外胚葉は表皮に分化する)。
・Wnt3a、FGFは尾方の菱脳や脊髄の組織を誘導する
・レチノイン酸(ビタミンA)はホメオボックス遺伝子の発現を制御する。
 
体節分化の分子的制御
ソニックヘッジホッグ/Shhが脊索や神経管底板でつくられ、体節の腹内側部が椎板になるように誘導する。椎板は転写因子PAX1を発現し、椎骨を形成するための軟骨や骨形成遺伝子カスケードを開始する。
・神経管背側部からWntタンパクが分泌され、体節皮筋板領域でPAX3を発現させてその境界を定め、また体節背内側部でMYF5を発現させて軸上筋を誘導する。
・Wntはまた、BMP4と協働してMYODを発現させ、四肢と体壁の筋を形成する。
・神経管の背側から分泌されるニューロトロフィン3/NT3は体節背側上皮に作用して真皮を誘導する。

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ホメオボックス遺伝子(HOX遺伝子群)
・頭尾方向のパターン形成を制御する遺伝子で、3’側にコードされるものが頭方を、5’側が尾方をコードし、頭方から尾方へと順次発現していく。
・・様々な生物でよく保存されている遺伝子だが、人ではHOXA〜HOXDの4つのコピーが存在する。
・・HOX遺伝子はレチノイン酸反応要素/RAREを介して、レチノイン酸の濃度によっても制御される。

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