発生学5 頭・頸部

頭・頸部

頭・頸部の発生では鰓弓/咽頭が重要な役割を果たす。神経堤由来の鰓弓は第1〜第6までの6対存在し、それぞれ独自の筋・神経・動脈をもち頭・頸部のさまざまな部位の形成に寄与する。また、各鰓弓の境目となる鰓弓の外側の溝を鰓溝/咽頭といい、内側のくぼみを咽頭という。咽頭嚢は前腸の先端部分がふくらみ、鰓弓に食い込んだ部分とみることもできる。

・鰓弓は発達とともにその独自の神経を引っ張っていくため、鰓弓由来の部分はその鰓弓の神経の支配をうける。

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鰓弓
第1鰓弓 口裂をはさんで上顎隆起と下顎隆起を形成する。上顎隆起からは上顎骨や頬骨などが生じ、下顎隆起は後にほとんど消滅するメッケル軟骨を形成し、それから上方ではキヌタ骨・ツチ骨を下方では下顎骨などが生じる。また、第1鰓弓は顔面の真皮にも寄与し、上顎・下顎とともにそれぞれに三叉神経の枝が分布する。
第2鰓弓 舌骨弓(図の青色部分)の軟骨(ライヘルト軟骨)からアブミ骨や側頭骨の茎状突起などが生じる。表情筋のすべても第2鰓弓。顔面神経
第3鰓弓 舌根胸腺の原基となる。筋は茎突咽頭筋しか生じない。舌咽神経
第4鰓弓 第6鰓弓と癒合して咽頭の軟骨などを形成する。迷走神経反回神経
第5鰓弓 痕跡的
第6鰓弓 第4鰓弓と癒合する。反回神経

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前腸由来の咽頭嚢は、第1鰓弓と第2鰓弓の間に第1咽頭嚢がある というようにして5対存在する。
第1咽頭嚢 耳管鼓室陥凹を形成し、外耳道を形成することになる第1鰓弓上皮と接触、さらに膨出部が拡張して原始鼓室となり、中耳耳管の形成に関係する。
第2咽頭嚢 口蓋扁桃の原基を形成し、これが扁桃窩となる。
第3咽頭嚢 第4咽頭嚢とともに末端に背側翼と腹側翼がある(=図では上と下の両方に伸びている)。腹側翼は胸腺となり、背側翼は上皮小体となる。この後、胸腺が下上皮小体をひっぱりながら尾方に移動する。(背腹は立体をイメージすればどっちかわかる。)
第4咽頭嚢 背側翼と腹側翼がある。背側翼から上皮小体が形成され、甲状腺の背面に付着する。
第5咽頭嚢 ほとんど痕跡的であるが、鰓後体を生じ、これがカルシトニンを分泌する傍濾胞細胞となる。

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鰓溝/咽頭
はじめ4つの鰓溝があり、第1鰓溝が下層に侵入して外耳道を形成する。他の鰓溝は、第二鰓溝内の間葉が活発に増殖して第3,4鰓溝を覆い、頚動という腔を残すのみとなるが、この頚動もやがて消失する。(図は上の左)
 
 
 
第1鰓弓から外側舌隆起と正中に隆起する無対舌結節が生じることにより出現する。またその後方に第2,3,4鰓弓から2つめの正中隆起である結合節/鰓下隆起が形成される。さらに後方には第4鰓弓から3つめの正中隆起が生じ、これは咽頭に分化する。
外側舌隆起が成長して無対舌結節を覆うようにして癒合し、舌の前半2/3を形成する。このため舌の前部は三叉神経下顎枝によって支配される。後方では第3鰓弓由来の細胞が増殖し、舌後方は舌咽神経によって支配されるようになる。一方で舌のさらに後方は、後頭体節から遊走してきた細胞が分化するために、舌下神経に支配される。
・・味覚刺激は舌前部は第2鰓弓の顔面神経、後部は舌咽神経で伝えられるみたい。
・・口腔〜咽頭では、感覚神経と運動神経が一致しない。舌では感覚神経と味覚神経も一致しない。

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舌の無対舌結節と結合節の間にある舌盲孔において、喉頭底の上皮細胞が増殖することによって出現する。その後甲状腺は前が2葉に分かれた憩室となって下降する。移動の際には舌から甲状舌管という管を伸ばしてつながっているが、これは後に消滅する。その後、第5鰓弓からの間葉が侵入して傍濾胞細胞を形成する。

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顔面
胎性4週に第1鰓弓から上顎隆起下顎隆起からなる顔面隆起が出現する。また前頭鼻隆起が顔の前面を構成している。前頭鼻隆起の両側で外胚葉の肥厚である鼻板が出現し、これが陥入して鼻窩となる。この陥入の際に鼻窩外縁が隆起し、内側と外側の鼻隆起が形成される。

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この後、上顎隆起が成長し、鼻隆起を内側に圧迫する。その結果内側鼻隆起と上顎隆起が癒合する。このとき上顎隆起と外側鼻隆起は鼻涙溝で分離している。この鼻涙溝の底が埋没して鼻涙管を形成し、さらにその上端が広がって涙嚢をとなる。その後上顎隆起はさらに成長し、外側鼻隆起と合体する。また上顎骨を形成する。
・・人中ってのは口と鼻をつなぐ部位の一般的な名前らしい(知らんかった

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口蓋
上顎隆起が内側へ成長する結果、顎間部という2つの隆起が形成され、これが一次口蓋(口蓋の前方部分だけ)となる。さらに上顎隆起の両側から斜め下方向に口蓋突起が伸び、これが挙上して水平になり左右が癒合することで二次口蓋となる。すると鼻中隔が下降してきて、二次口蓋の上面と癒着する。

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鼻腔
鼻腔は鼻窩が深くなることで形成される。初め口蓋と鼻腔は口鼻膜で隔てられているが、これが破裂することにより連結する。その後二次口蓋が形成されることによって再び鼻腔は口蓋から分離される。
副鼻腔は鼻腔側壁から発達し、上顎骨、篩骨、前頭骨、蝶形骨へと広がる。思春期にこられの副鼻腔は最大の大きさに達し、顔面の形状の形成にも寄与する。

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口腔を覆う上皮の基底層から顎の形に沿って前方から順にU字型の歯堤が生じ、これから乳歯の数と同じ上下各10個の歯蕾へと分化する。次に歯蕾の表面の上皮が陥入しエナメル上皮となり、その内側の上皮が分化してエナメル芽細胞となってエナメル質を産生する。またエナメル上皮の下端にある乳頭に入り込んだ間葉細胞からはゾウゲ芽細胞が生じ、ゾウゲ質を産生する。エナメル質が成長するにともないゾウゲ質も成長し、歯髄腔は狭くなり血管と神経をいれる管となる。その後さらに象牙質と接する部分からセメント芽細胞が生じセメント質を産生し、またその外面には歯周靱帯が形成され、歯を固定する。
永久歯の歯蕾は乳歯の下側に後に形成され、これが発育すると乳歯の歯根は破骨細胞によって破壊されていく。
・エナメル芽細胞は外側に存在して内側にエナメル質を付加していき、歯が生えるとともに脱落する。一方で象牙芽細胞はゾウゲ質の内側の歯髄側に存在し、一部がゾウゲ線維となって残る。

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顔面形成の分子的制御
・顔面の大部分は頭部神経ヒダの縁から鰓弓へと遊走してきた神経堤細胞に由来する。菱脳部では、R1〜R8までの菱脳分節という分節的な区域から特定の鰓弓への遊走が起きる。その際に一部の分節はアポトーシスによって退化する。
・Shhやレチノイン酸、また外胚葉からのFGFなどの作用によって部位ごとに発現するHOX遺伝子が違い、それによって各鰓弓が形成される。

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歯の発生の分子的制御
・Wnt、BMP、FGF、Shhなどの因子、MSX1、MSX2などの転写因子によって制御されるHOX遺伝子の組み合わせにより、切歯から臼歯までの歯のパターンが形成される。
・歯の発生に際してはエナメル結節がオーガナイザーとして働き、これはFGF4、Shh、BMP2、BMP4を発現させる。