発生学2 心脈管系

血管系の発生では、まず間葉細胞から生じた血管芽細胞が凝集した血島が形成され、これが腔を生じつつ分化することで血管が、またこの血管芽細胞が別に分化して血球が形成される。
 
・はじめの脈管形成は卵黄嚢においておきる。

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心臓原基の形成
第3週ごろに口咽頭膜付近の中胚葉から造血管索が生じる。これが管状化して心内膜性心筒となり、胚子の側屈に伴ってこれが癒合することで1本の心筒が形成される。この心筒は心膜腔内に突出していき、頭方と尾方端の血管で心膜腔内につり下げられるようになる。こうした変化をしているうちに心筋が肥厚し、また心外膜が形成される。

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心臓ループの形成
心筒は上から心球・心室・心房とふくらみを形成しながら成長を続けるが、周囲の部分よりも成長が速いために次第に腹側からみて反時計回り方向に弯曲をはじめ(心臓ループの形成)、心房が心室の上にくるようになる。また、この際に心房は心膜腔内に取り込まれる。
・・胚子の頭屈がおきることによって、心臓は相対的に口咽頭膜付近の頚部から胸部へと下降していく。

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静脈洞の発達
左右の静脈洞卵黄嚢静脈臍静脈総主静脈を受けている。しかし前主静脈が短絡する(左腕頭静脈になるものによる)ことと卵黄嚢静脈と臍静脈の変化(左臍静脈が退行するなど)によって右静脈洞に血流が切り替えられる。この結果右静脈洞が大きくなり、右心房内に取り込まれて右心房の平滑壁部を形成するようになる一方、残った左静脈洞は冠状静脈洞を形成する。また左心房の壁の大部分は原始肺静脈をとりこむことで形成され、心房が拡大することによって左心房から4本の肺静脈がでるようになる。
・・静脈洞が心房に取り込まれることで静脈から心房への入り口である洞房口には左右の洞房弁が形成される。この弁の上側は静脈洞が心房に取り込まれるとともに心房中隔に癒合するのに対し、下側は下大静脈弁冠状静脈洞弁となる。
 
 
心臓中隔の形成
中隔の形成には二つの様式があり、ひとつは心房と心室が形成される際にみられるような一部を残して他が成長するためにくびれができることによるもので(これだけでは区切りは不完全)、もうひとつは心内膜が内側へ隆起することによる。
 
心房中隔
心房の天井から心内膜隆起によって一次中隔が下側に伸びていく。この際に下端に隙間が残され、これを一次孔とよぶ。さらに心内膜隆起がすすむと一次孔は閉鎖されるが、同時に一次中隔の上部に孔がひらき、それらが合体することで二次孔が形成される。次に心房が動脈角を吸収するのにともない心房天井部から筋性の二次中隔が下りてくる。二次中隔は二次孔を塞ぐくらいのところで成長をやめ、残された二次孔の部分を卵円孔とよぶ。一次中隔の上部は次第に消えていくが、残された部分は卵円孔弁として機能するようになる。

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房室管における中隔
心房と心室をつなぐ房室管ははじめ左室にのみつながっているが、後に右方向に拡大して右室とも連絡するようになる。この房室管の上下と外側(左右)の4方向から心内膜隆起がおき、房室管は左右に分けられる。
 
房室弁
房室口を取り巻いて間葉組織の増殖がおき、その心室側の部分が血液によってくりぬかれ索だけが残る。これによって弁が形成される。

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動脈幹と心円錐
心室から血液がでていく経路もはじめは一つの管状である(心球)。心球の上部では、内部に動脈幹隆起が生じることで大動脈肺動脈中隔が形成され、大動脈と肺動脈幹の2つの部分にわけられる。この際にねじれるようにして隆起が形成されるために、これらの血管はねじれるように存在するようになる。また心球の下部(心円錐)も、同様に円錐隆起が大動脈肺動脈中隔と連続してラセン状に生じ、癒合して円錐中隔となって右室と左室の流出路として分断される。
 
心室中隔
下側から筋性の心室中隔が成長し、心室間孔を残して停止する。ここに上から心円錐の円錐中隔が形成されてくるとともに心室間孔は小さくなり、さらに下側から心内膜の隆起が生じて円錐中隔と癒合し、これが心室間孔の閉鎖後は心室中隔の膜性部となる。

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半月弁(大動脈弁・肺動脈弁)
動脈幹に形成された隆起の上側が陥没していって弁だけがのこる。

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刺激伝導系の形成
静脈洞に存在していたペースメーカー部位が静脈洞の右房への合体とともに洞房口付近に位置するようになり、洞房結節となる。
房室結節と房室束/ヒス束は静脈洞の細胞と房室管の細胞に由来し、ここから延びた線維が心筋全体へ分布する。その後、結合組織性の細胞が心外膜から進入して心房と心室をわける(心臓骨格の形成)ために、この線維が心房から心室への唯一の経路となり、刺激伝導系として確立する。
 
 
動脈
 
動脈弓
鰓弓は独自に脳神経や動脈を受け入れるが、動脈弓は動脈幹の最末端である大動脈嚢から鰓弓へと伸びた血管から構成されている。このようにして鰓弓へとのびることで形成される6対(うち1つは不完全で実質は5対)の動脈弓はそれぞれ独自に形成され、一部を残してやがて退縮していく。
第1動脈弓 一部が顎動脈に
第2動脈弓 一部が舌骨動脈とアブミ骨動脈に
第3動脈弓 総頸動脈になり、内頸動脈と外頸動脈の起始部にも関係する。
第4動脈弓 左は大動脈弓になり、右は右鎖骨下動脈に
第5動脈弓 すぐに消失
第6動脈弓 肺動脈弓に。また右側は動脈管(→動脈管索)を形成する
・・心臓の位置が下方に移動するにつれて頚動脈など縦に走るものは伸長する。反回神経はこの際に動脈弓に引っかかっているため下りてから再び上がるという走行をとるが、動脈弓の消滅が左右非対称であるため反回神経も非対称になる。

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卵黄嚢動脈と臍動脈
卵黄脳動脈は消化管の背側腸間膜に分布する3つの動脈を形成する。腹腔動脈(前腸)、上腸間膜動脈(中腸)、下腸間膜動脈(後腸)。
臍動脈は総腸骨動脈と結合し、起始部は内腸骨動脈上膀胱動脈として残るが遠位部は閉塞して臍動脈索となる。
 
四肢の動脈

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静脈
卵黄嚢静脈の遠位部は成長中の肝臓と合流して肝シヌソイド門脈を形成する。また近位部は左静脈洞の縮小の影響をうけ、左は一部消失する一方で右は下大静脈の肝心部上腸間膜静脈を構成するようになる。
臍静脈は右臍静脈の一部が消失するとともに左臍静脈が肝シヌソイドに結合するが、胎盤の血流量が増すにつれて直接のバイパスである静脈管(→静脈管索)をつくる。
・・肝シヌソイドは、腎臓の糸球体みたいな、肝臓のなかの血管の構造。

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主静脈
最初、主静脈が胚子の主な灌流系となっている。これは頭部を灌流する前主静脈とそれ以外の部位を担当する後主静脈からなり、これらは静脈洞にはいる直前で癒合して総主静脈となっている。
ここに発生5〜7週になると多数の静脈が追加形成される。主なものに主上静脈、主下静脈、仙骨主静脈(下肢)があり、主上静脈は後主静脈の機能を受け継ぐ。この後、左から右への切り替えに伴って左右の吻合が形成される。
前主静脈(右) 上大静脈、右腕頭静脈に
前主静脈(左) 左心房斜静脈に
主上静脈(右) 奇静脈に
主上静脈(左) 縦の連結がなくなるため半奇静脈に
主下静脈(右) 下大静脈の腎分節に
主下静脈(左) 左生殖腺静脈、左右が吻合して左腎静脈に
仙骨主静脈(右) 下大静脈の仙骨主静脈分節に
仙骨主静脈(左) 左右吻合して左総腸骨静脈に

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胎児循環
胎盤から酸素と栄養が供給されるため、肺での呼吸と肝臓での代謝は必要がなく、迂回する。
・静脈管は肝臓を迂回する
・卵円孔・動脈管は肺循環を迂回する
・・動脈弓で上体への血管がわかれた後で動脈管(静脈血ぎみ)が合流するため、上体のほうが高酸素・高栄養の血液がいき、胎児は上半身に比べて下半身の成長が悪くなる。

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・肝シヌソイドの静脈管には括約筋があり、子宮の収縮により静脈血量が過剰になるときには収縮して心臓の負荷をへらす
胎盤血のほとんどは左心房に入るが、少量は二次中隔下縁の分節櫛によって右心房に入る。
・右心房→右心室と流れた血液は肺動脈幹に注ぐが、胎児期の肺は血管抵抗が大きいため動脈管を通って下行大動脈に合流する
・臍動脈(臍動脈索)、動脈管(動脈管索)、臍静脈(肝円索)、静脈管(静脈管索)などは、平滑筋によってすぐに閉鎖したあと、血管が内皮が増殖して完全に閉塞する。
・卵円孔は 動脈管の閉鎖→肺血流量増加→左房の圧力増加 と、胎盤血液の遮断による右房の圧力低下によって一次中隔が二次中隔に押しつけられて閉鎖し、さらに1年ほどたつとそれらが癒合して完全に閉鎖する。
 
 
心循環系の原基が認められるようになってから遅れること2週間、第6週の終わりにリンパ系は発生をはじめる。
・胚子期の終わりには頸リンパ嚢や腸骨リンパ嚢、乳ビ槽などのリンパ嚢が生じる。ここに血管と同様の発生のしかたで生じるリンパ管が連続し、大きな吻合がリンパ系のなかで形成される。またリンパ嚢はリンパ節となる。
・リンパ球ははじめ卵黄の、後には肝臓や脾臓の幹細胞に由来し、それが骨髄や胸腺へと移動し成熟することで分化する。
・扁桃はリンパ節の集合から発生する。
 
 
 
 
 
血管の分子的誘導
血島→(脈管形成)→血管→(血管新生)→新しい血管→・・・
FGF2に誘導されて血管芽細胞ができる
・血管芽細胞は血島中心部では造血幹細胞に、血島周縁部では血管前駆細胞に分化する。
・・周囲の中胚葉細胞から分泌される血管内皮増殖因子/VEGFによって血管芽細胞の分化や血管新生が刺激される。
 
・造血幹細胞ははじめ血島からできるが、後に大動脈−生殖巣−中腎部域/AGM、肝臓、さらに骨髄と生じる部位が変化していく。
 
 
心臓発生の分子的制御
・頭方の内胚葉からのBMP2、BMP4、Wnt(中胚葉からのシグナルで抑制性)のシグナルが転写因子NKX2.5を活性化し、これがその上を覆う臓側中胚葉を心臓発生域へと誘導し、また後に刺激伝導系の分離と発達にも作用する。
・・TBX5は中隔形成に関係する。

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発生学1 体腔・骨格・外皮

#基本的にラングマンに基づいており、ところどころムーアで補った。
#用語についてはラングマンとムーアでもかなりの隔たりがあった。だから用語はそんなもんって認識で。図中の用語についてもとった教科書などによって違っていることがあるため、だいたいニュアンスが同じものは同じものをさしていると考えてたほうがいい。
 
 
 
各論

体腔
壁側中胚葉臓側中胚葉を包み込むようにして折りたたまれていくことで胚内体腔ができている。
 
この腔所がまず横中隔によって不完全に区切られる。これによって上部の心膜腔部分と腹膜腔部分がだいたい分断されるが、心腹膜管によって両者はつながっている。

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この状態で背側から胸腹膜ヒダが成長してきて横中隔と癒合する結果、胸腹膜を形成し、心膜腔部分と腹膜腔部分の分離が完了する。また、後に体壁から筋性の突起が成長してきてこの胸腹膜を置き換えていくため、筋肉と横中隔からなる横隔膜が形成される。
・・横中隔は生後に腱中心となる。

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心膜腔部分と胸膜腔部分の分離は横隔膜の形成と同時におこなわれている。これは胸心膜ヒダが成長することによって行われる。肺芽が心腹膜管部分で成長するに伴って胸心膜ヒダを通じ心膜腔を側方から圧迫していくが、その際に胸心膜ヒダも成長し、胸心膜として食道の背側間膜及び横中隔と癒合し、この分離は完了する。肺芽が圧迫することで心膜腔が縮小され、心膜腔と胸膜腔のバランスがとれ縦隔が形成される。

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横隔膜は頚椎からのびる横隔神経によって支配される。これは胚子の成長によって相対的に横隔膜が下降することによる。その際に横隔神経は胸心膜を通過するため、成人では横隔神経は胸心膜に由来をもつ線維性心膜の上に位置するようになる。

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骨格系
扁平骨は膜内骨化によってつくられ、長管骨は軟骨内骨化によってつくられる。膜内骨化では間葉組織が凝集し、その中に一部の細胞が骨芽細胞へと分化して骨基質を産生することによって行われる。一方で軟骨内骨化でははじめに一次骨化中心にて硝子軟骨が形成され、その軟骨が石灰化した後に骨化することから開始され、以降骨端軟骨板にて軟骨の形成−石灰化−骨化というプロセスが行われることで骨の成長がおきる。
 
頭蓋は上部の神経頭蓋と下部の内臓頭蓋にわけられる。頭蓋は膜内骨化でつくられる骨が多いが、神経頭蓋の底部には軟骨からなる軟骨性頭蓋がある。頭蓋の大部分は神経堤に由来し、のこりは沿軸中杯葉に由来する。
 
四肢は中胚葉由来に芯をもつ体肢芽に、外胚葉が肥厚していくことで成長する。まず手と足の膨らみができ、その付け根がアポトーシスすることで棒状の概形ができる。そこから軟骨内骨化によって骨が形成されていく。その後、上肢は外向きに回転して肘が外を向き、下肢は内向きに回転して膝は頭側を向くようになる。
また四肢の外形を形成している間に体肢芽の間葉は凝縮をはじめ、軟骨細胞に分化し、関節中間帯が形成される。この領域の細胞が増殖し、その後に細胞死することで関節腔が形成される。またその周囲の細胞が分化して関節包が形成される。

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脊柱は脊索の周りに集まった体節の椎板が上下に分離し、断片が上下の別の椎板の断片とくっつく。さらに下側の断片から分離した間葉細胞が分化して椎間円板を形成し、脊柱の分節構造が形成される。この際脊索は退行して消失していくが、髄核だけは脊索から形成される。

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・肋骨も椎板由来で、胸椎の肋骨突起より軟骨内骨化にて成長する。
・胸骨は腹側外側の壁側中胚葉から分化し、この左右一対の原基が移動しながら軟骨化し、さらに正中にて癒合した後に骨化することで形成される。
・・このような発生をするために剣状突起は二分したり穿孔をもったりする。
 
 
四肢発生の分子的制御
・頭尾軸に沿った肢の位置はHOX遺伝子群によって制御される。
・最初に肢芽がふくらみはじめるのはFGF10の作用により、その後はホメオボックス遺伝子のMSX2のシグナルが外胚葉性頂提の形成を誘導し、その位置はSER2エングレイルド1などの作用で決められる。
・外胚葉性頂提はFGF4FGF8を発現し、肢を遠位方向に成長させる。
 
・肢の前後軸(背腹軸)は肢の付け根近くの後縁に存在する極活性化域/ZPAによって制御され、これがレチノイン酸を産生することでソニックヘッジホッグ/Shhを刺激し、これによって指が正しい順序で形成される。
・肢の背腹軸はBMPの制御もうけ、BMPEN1発現→Wnt7a発現抑制となる。Wnt7aはZPAでのShhの発現を維持する。またWnt7aはLMX1の発現を誘導し、これは細胞を背側のものに特殊化させる。
・・Shh、FGF、Wnt7aはHOX遺伝子を活性化し、そうしたさまざまなHOX遺伝子によって四肢骨の型と形が制御される。
 

筋系
骨格筋は中胚葉(沿軸中杯葉→体節→筋板)由来である。筋板は一次後枝に支配される背側部の上分節一次前枝に支配される腹側部の下分節にわかれる。これらの神経ははじめに分布した筋に付着して一緒に遊走していく。上分節からの筋は脊柱の伸筋を形成し、下分節の筋は体肢と体壁の筋を形成する。この際、筋形成は結合組織に支配される。筋の成長は、筋芽細胞と筋管が絶え間なく融合していくことによってなされる。
 
ほとんどの平滑筋と心筋は臓側中胚葉に由来し、虹彩や乳腺、汗腺の平滑筋は外胚葉から分化する。
 
 
筋発生の分子的制御
・体節の下方の下分節ではBMP4とWnt(とFGF)が共同して筋特異性遺伝子MYODを発現する。
・体節の上方の上分節ではBMP4→Wntにより別の筋特異性遺伝子MYF5を発現する。
・これらはミオゲニンMRF5タンパクを作る遺伝子を活性化し、それらが筋の形成を促進する。

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外皮系
皮膚とその付着物(毛、爪、乳腺)は体表外胚葉に由来する。ただしメラニン細胞だけは神経堤由来であり、表皮まで遊走してくる。また真皮は中胚葉由来(側板中胚葉と皮節)である。
毛は表皮細胞が下層の真皮にむかって伸びて発生し、脂腺や汗腺、乳腺などもすべて表皮の増殖による。毛の血管や神経終末は、毛の陥入部分の先端にある毛乳頭が中胚葉によって埋められ、その中胚葉中に発生する。
 
・・乳腺も始めは陥入することで形成されるが、その下の間葉が増殖することで逆に膨らむ。
・・乳腺は腋から鼠径部にかけて存在する乳腺堤において多数発生するが多くは途中で消滅し、一対だけがのこってあの乳房になる。
 
 
外皮発生の分子的制御
FGF7とGM−CSF/顆粒球−マクロファージ刺激因子(IL−1分泌を刺激する)は、肺芽層の細胞が分化するか幹細胞にとどまるかを調節する。また転写調節因子p63も肺芽層の分化を調節する。
Notchシグナルは肺芽層ではケラチン分子の発現をKrt、Involutionなどを活性化することにより促進するが、表層ではFilaggrinやLoricrinなどを抑制することで抑制する。

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発生学0 初期発生

#09/12各論だけにするつもりだったが、解剖対策に復習として一応総論も軽くまとめた。ざっくりだけど。
#用語についてはラングマンとムーアでもかなりの隔たりがあった。だから用語はそんなもんって認識で。図中の用語についてもとった教科書などによって違っていることがあるため、だいたいニュアンスが同じものは同じものをさしていると考えてたほうがいい。
 
 
受精
 
1,精子が卵管内を移動中に先体を覆う被膜を除去され受精能獲得→放線冠を通過できるようになる
2,透明体のZP3(リガンド)に精子が結合すると精子からアクロマイシンが放出され透明帯を通過できるようになる(先体反応
3,精子卵子と融合する
4,卵子の表面顆粒からリソソームが放出され、これによって透明帯が変性させて(透明帯反応)、他の精子を通過させなくする。
 
受精がおきると卵子減数分裂が再開し、第2減数分裂が完了して染色体が女性前核を形成する。一方で精子の核は男性前核を形成する。
各前核はDNA量を倍増させたあと、接合して2媒体となり、有糸分裂を開始する。
 
2細胞期→4細胞期→8細胞期→(コンパクション(割球間の結合が強化され密集する))→桑実胚(16細胞期)
 
 
二層性胚盤(第2週)
内部細胞塊/胚結節と外細胞塊/栄養膜ができる。この状態を胞胚、とくに内部に空洞があるため胚盤胞という。

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栄養膜は栄養膜細胞層(内側)と栄養膜合胞体層(外側)にわかれる。(細胞層で分裂した細胞が合胞体層に遊走して融合する。合胞体=融合した細胞)
胚結節の細胞はちょっと複雑に分化して、細胞塊の中に羊膜腔が生じ、その床の部分にあたる細胞が変化して胚盤葉上層(羊膜腔側)と胚盤葉下層胚盤胞腔/原始卵黄嚢腔側)となり、二層性胚盤を形成する。
・このあたりで受精卵(この名前でいいのかな?)は母胎の子宮内膜に進入して、その中にあるような状態になる。
・・子宮粘膜上皮への侵入の際には、栄養膜がインテグリンという受容体を発現し、そこに上皮の細胞外基質であるラミニンやフィブロネクチンが作用するというように、栄養膜と上皮が協調して機能する。
 

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胚外体腔膜(黄色)が増殖し、胚外中胚葉を形成する。この胚外中胚葉中に胚外体腔が生じ、胚外体腔と卵黄嚢に囲まれる内側部分を胚外臓側中胚葉、胚外体腔と栄養膜細胞層・羊膜に囲まれる外側部分を胚外壁側中胚葉という。

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ここから胚外体腔が大きくなりつつ癒合して胚盤胞腔/原始卵黄嚢腔は圧迫され下側につぶれ、1つの大きな胚外体腔となる(≒絨毛膜腔)。さらに肺外臓側中胚葉の表面に胚盤葉下層から遊走してきた細胞がつき、卵黄嚢(二次卵黄嚢)が形成される。
またこの間に栄養膜では細胞柱としての絨毛(一次絨毛)が現れ始める。
・・胎児循環が形成され始めるのもこの時期。

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三層性胚盤(第3週)
原始線条が出現し、胚盤葉上層の細胞がここから下層に陥入を始める。原始線条が尾方に伸びていく際に、頭方では原始窩原始結節が形成される。この3胚葉が分化する過程を原腸形成という。
この際に、
・胚盤葉下層より下に入ったものは内胚葉 
・胚盤葉上層と下層の間にある細胞は中胚葉
・胚盤葉上層に残存する細胞は外胚葉 を形成する。
・・原腸形成後、全ての脊椎動物は類似した発生段階を経る。この時期を脊椎動物(界門綱目科属種・・・)に特徴的なボディプランを示すという意味からファイロティピック段階という。

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この後 原始線条からの陥入はなくなり、原始線条は縮小する。しかし原始窩からは陥入が続き、脊索の形成が行われる。これは原始窩から陥入した細胞が頭方の脊索前板へと移動し、脊索管が形成される。その後 脊索管の床がその下にある胚性中胚葉と癒合したあとでとろけて失われ、脊索管は卵黄嚢と交通するようになるとともに板状の脊索板となる。しかし脊索板の頭端の細胞から増殖がはじまって脊索板は隆起し、脊索が形成される。
・・この部分のラングマンは非常にわかりにくい。ムーアのほうがいい。
・この原腸形成期に体軸が確立される。

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脊索が形成されているころ絨毛も成長し、栄養膜細胞を芯にして表面を合胞体で覆われていただけの一次絨毛から、中胚葉細胞がその内側に進入した二次絨毛、さらに血管などが生じてきた三次絨毛へと成長する。
また栄養膜細胞層は増殖して外側にあったはずの合胞体層中に進入し(絨毛でも確かに進入してる)、ついに母胎側まで達して外側に外栄養膜細胞層殻を形成し、栄養膜全体を母胎側の子宮内膜に接着させる役割を果たすようになる。
胎盤の栄養膜合胞体層では、プロゲステロンヒト絨毛性ゴナドトロピン/hCG、ソマトマンモトロピンなどのホルモンが産生される。プロゲステロンは子宮や乳腺の発達を促進し、hCGは黄体の維持を、ソマトマンモトロピンは母胎の血糖を胎児に優先的に利用させる効果がある。

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・・体軸は原腸形成期に決定される。頭尾→背腹→左右と決定されるようだが、背腹って二層性胚盤の時から決まってるんじゃないの?
 
 
 
原腸形成の分子的制御
原腸形成以前
・胚盤の頭方縁の胚盤葉下層細胞が形成する領域である前方内臓性内胚葉/AVEにおいて転写因子の遺伝子OTX2、LIM1、HESX1などや分泌因子セルベルスの遺伝子といった頭部形成遺伝子が発現する。
・これによって頭尾軸が確立される。
・・・以下、斜体は遺伝子、斜体でないものはmRNAやタンパク質など遺伝子産物と区別する。
 
原腸形成の開始 
・原始結節にてトランスフォーミング増殖因子/TGF-βファミリーのノーダルNodalが発現し、原始線条の形成と維持に働く。
 
原腸形成開始後
骨形成タンパク4/BMP4が胚盤全体で分泌され、線維芽細胞増殖因子/FGFと共同して中胚葉の腹側化を行い、中間中胚葉(→腎)や側板中胚葉(→血液、体壁)の形成に関与する。
・・BMP4の働きは原始結節で発現する遺伝子(コルジン、ノギン、フォリスタチンなどを生じる)によって阻害され、腹側化するところとしないところができる。コルジンは転写因子グースコイドによって活性化される。
HNF3βは原始結節の維持と前脳や中脳の形成を誘導に関係する。
短尾遺伝子/T遺伝子は背側中胚葉の形成を調節する。
・・このようにして背腹軸が確立される。

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左右軸の確立
・線毛はふつう9×2+2構造だが、発生初期時には9×2+0構造の孤立線毛が現れ、時計回りに回転をはじめる。
・この回転により生まれた左向きの結節流が左側の感覚受容器で感知され、左側だけに特別なシグナル伝達機構が働く。
・原始線条から胚子の左側にだけ線維芽細胞増殖因子8/FGF8が分泌され、ノーダルの発現を誘導する。また神経板が形成されたあとではFGF8はノーダルとともにレフティ2を発現させる。
レフティ2は左側性の確立させる転写因子PITX2の発現を誘発する。
・・同時にレフティ1も左側で発現するが、これは左側を特徴付けるシグナルが右側に移動するのを抑制する。
NKX3.2は右側でだけ発現しており、右側性の確立に関係があるとされる。
・・・・孤立線毛は腎発生にも関係し、ADPKD遺伝子などに異常をきたすと嚢胞腎となる。

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胚子期(3週〜8週)
脊索が外胚葉を誘導する結果、外胚葉が隆起して神経ヒダが形成されさらに陥入して神経管となる。これはそののち頭方部は脳胞に、尾方部は脊髄に分化する。この際陥入した神経ヒダ(→神経管)よりもちょっと外側にあった外胚葉は神経堤となり、これは活発な遊走により中胚葉に入り、間葉組織となって神経節などの形成をおこなうようになる。

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・・なお神経管は第31体節レベルで尾側神経孔が閉鎖することにより終了してしまうため、そこからさらに尾方の仙部、尾部の神経管は尾芽から形成される。これを2次神経管形成

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中胚葉は4つに分けられる。中央部の神経管のまわりの中胚葉は沿軸中杯葉となり、これは体節を形成する。その外側の中間中胚葉は後に腎節や造腎細胞索など泌尿器系の細胞に分化する。また上側の羊膜腔を囲む中胚葉は壁側中胚葉となり、下側の卵黄嚢を囲む中胚葉は臓側中胚葉となる。この2つの中胚葉は、ここから羊膜腔が卵黄嚢を覆うように下側にダイナミックに移動することによって、胚内体腔(→体腔)の壁側・臓側をそれぞれ形成するようになる。また心臓や生殖巣などを形成する間葉にも関係する
・・ここの動きはよく理解しておくことが大切。
・・最後の図の一番外側は中胚葉になっているが、ここは羊膜腔を隔てた外側になったことに注意。その後胎児になるのはその内側の外胚葉で囲まれた部分から。これで内・中・外胚葉で囲まれた納得のいく構造になった。

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沿軸中杯葉は体節を形成するが、これは椎板・筋板・皮板にわかれ、それぞれ脊椎・筋肉・皮膚などの形成に関係する。

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先の包み込むようなダイナミックな動きは側方だけでなく頭尾方向でも起き、側方の包み込みで生じた腸管が頭尾方向の包み込みによって曲げられる(?)かんじで前腸・中腸・後腸が形成される。
前腸は形成時は口咽頭膜によって羊膜腔と隔てられているが、後に破れ羊膜腔と交通する。また後腸は排泄腔から排泄腔膜で隔てられているが、後に破れ肛門が開口する。中腸は卵黄嚢と交通しているが、次第に細くなり卵黄腸管となり、最終的には閉塞する。
また、卵黄嚢からでた憩室である尿膜は、部分的に胚子に取り込まれて排泄腔の形成に寄与している。
 

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神経誘導の分子的制御
・BMP4がコルジン、ノギン、フォリスタチンによって阻害されると、外胚葉から頭方での神経板の誘導が起き、前脳や中脳の組織を誘導する(阻害されないと外胚葉は表皮に分化する)。
・Wnt3a、FGFは尾方の菱脳や脊髄の組織を誘導する
・レチノイン酸(ビタミンA)はホメオボックス遺伝子の発現を制御する。
 
体節分化の分子的制御
ソニックヘッジホッグ/Shhが脊索や神経管底板でつくられ、体節の腹内側部が椎板になるように誘導する。椎板は転写因子PAX1を発現し、椎骨を形成するための軟骨や骨形成遺伝子カスケードを開始する。
・神経管背側部からWntタンパクが分泌され、体節皮筋板領域でPAX3を発現させてその境界を定め、また体節背内側部でMYF5を発現させて軸上筋を誘導する。
・Wntはまた、BMP4と協働してMYODを発現させ、四肢と体壁の筋を形成する。
・神経管の背側から分泌されるニューロトロフィン3/NT3は体節背側上皮に作用して真皮を誘導する。

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ホメオボックス遺伝子(HOX遺伝子群)
・頭尾方向のパターン形成を制御する遺伝子で、3’側にコードされるものが頭方を、5’側が尾方をコードし、頭方から尾方へと順次発現していく。
・・様々な生物でよく保存されている遺伝子だが、人ではHOXA〜HOXDの4つのコピーが存在する。
・・HOX遺伝子はレチノイン酸反応要素/RAREを介して、レチノイン酸の濃度によっても制御される。

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